不整脈とは
心臓は、血液を送るポンプの働きをしている「心室」と全身の血液が戻ってくる上の部屋「心房(上室)」があります。通常、心臓は1分間に60~100回、規則正しいリズムで心房ー心室と拍動を繰り返して、全身に血液を送り出しています。この孫像のリズムは、心臓のてっぺんにある洞結節と呼ばれる司令塔から心臓に「収縮せよ」という命令(電気刺激)が送られ、調節されています。
不整脈には、①期外収縮 ②発作性頻拍症 ③粗細動 などがあります。
- ① 期外収縮とは
- 心洞結節以外の部位から異常電気刺激が起こる不整脈で、正常な脈と脈の間に発生し「脈が飛ぶ」「胸がドックン」「胸がキューツ」などの症状を自覚することが多いようです。期外収縮は、心臓の基礎疾患がなく、自覚症状がない場合は治療の対象にはなりません、しかし、期外収縮の数が多く「どうき・息切れ」「不安感・恐怖心」などの症状によって、眠れないとか仕事に集中できないなど「生活の質」の低下を招いたり、「頻拍症」を引き起こす危険性がある場合は治療が必要です。
- ② 発作性頻拍症とは
- 「ドキドキドキ」と胸の強い拍動を自覚し、突然脈が速くなるものです。心臓が勝手に暴走した状態で、持続時間が長い場合は心臓の疲労を引き起こし、心不全の原因となります。「めまいや失神・強い胸部症状」を伴う場合やWPW症候群(突然始まる、規則的な動悸発作)という先天異常に伴う場合は、命にかかわることもあり緊急的な処置を要します。
- ③ 粗細動とは
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不整脈の治療
高周波カテーテルアブレーション
不整脈の治療法は、薬物療法と非薬物療法があります。
薬物療法は、脳梗塞などの血栓症を予防する抗血栓療法に加え、発作回数そのものを少なくする抗不整脈薬療法があります。しかし、抗不整脈薬の効果は半年から数年であり、不整脈を抑え切ることは困難です。したがって、薬物療法は抗血栓療法を続けることが主体となります。
これに対し、非薬物療法には根治が可能な高周波カテーテルアブレーション治療があります。これは細い管を足の付け根の血管から挿入し、その先端を血管内を通して心臓内に誘導し不整脈の発生源となっている部位に対して高周波をあて、病巣を焼き切る(アブレーション)治療法です。
発作性心房細動の発生源の多くが心房に注ぎ込む肺静脈と判明しており、アブレーションは肺静脈が出ている心房の周辺に高周波をあてること(電気的肺静脈隔離術)によって遂行されます。手技時間は2~3時間ほどで、術後3~5日で退院可能です。
中部徳洲会病院の心房細動アブレーションの特徴 “非造影・非透視アブレーション”
造影剤を使用しない、放射線透視を使用しない心房細動アブレーション
心房細動患者の増加に伴いカテーテルアブレーション治療も年々増加しています。その検査や手技における造影剤の使用によって起こる腎機能の低下・造影剤腎症の発症や、長時間に及ぶ放射線被曝が問題となる事があります。
- 造影剤を使用しないメリット
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アブレーションの前に造影剤を用いた心臓の3D(立体)CT撮影を行い、さらにアブレーション中に左心房や肺静脈の造影を行う事があります。造影剤を使用することにより腎機能が悪化し造影剤腎症を発症したり、アナフィラキシーショックなどの重篤な合併症が起こる場合があります。
当院では心房細動のアブレーションを行う場合、通常、造影剤は使用しません。
心房細動患者の背景には、高齢、糖尿病、高血圧、動脈硬化等を併発していることが多く、慢性腎臓病(CKD)を合併、あるいは潜在的な腎障害を持っている方が少なくありません。腎機能低下患者さんに対する造影剤の使用は、造影剤腎症を発症や進行すると人工透析に至る危険があり、造影剤の使用にはリスクを伴う事があります。
当院では心房細動アブレーションの際、通常造影剤を使用しないため、腎機能が低下した患者さんや気管支喘息・造影剤アレルギーのある方にも安心して心房細動アブレーションを施行する事が可能です。
- 放射線被曝を最小限にする
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心房細動に対するアブレーションは、他のアブレーションに比べ時間がかかることが多くその分、放射線被曝は少なくありません。放射線被曝は患者さんのみでなく、術者やそのほかの医療スタッフに対するリスクとなります。そこで、当院では放射線透視をできるだけ行わず、より確実にアブレーションする手法を確立した非透視アブレーションを行っております。
以上のように当院では
心房細動アブレーション時における術前・術中の造影剤使用や、アブレーション中の放射線透視を使用しない、非造影・非透視アブレーションを導入することによって、腎障害の程度にかかわらず腎機能のさらなる悪化や造影剤アレルギーを懸念することなく安心して治療に専念することが可能となりました。
不整脈は大城力、野村悠で不整脈専門外来、カテーテルアブレーション、ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)、両心室ペースメーカー(CRT-D)を担当しています。
高周波カテーテルアブレーション機器
CARTO3 System,Version7
CARTO診断装置は3Dマッピングシステムによる不整脈診断装置です。当院循環器医師により2003年沖縄県内に初めて導入され、その後バージョンアップを繰り返し2020年5月に最新のCARTO3 バージョン7を中部徳洲会病院に先行導入しました。
これまでカテーテルアブレーションは、放射線透視で心臓内のカテーテルの位置を確認しながら行っていたため放射線被曝が少なくありませんでした。CARTO装置を用いる事で、不整脈診断の向上のみでなく心臓の細かい構造やカテーテルの位置をCARTOモニター上に映し出だし治療を行う事が可能となりました。そのため放射線透視・放射線被ばくを最小限に抑えることが可能となりました。
またアブレーション部位ごとの焼灼(焼く)程度もCARTOモニター上に記録されるため、より確実に安心・安全なカテーテルアブレーション治療を行う事ができるようになりました。 (中部徳洲会病院では心房細動アブレーション時、ほとんど放射線透視を使用しないことや術前や術中に造影剤を使用しておりません)
さらに、 2020年5月に最新のCARTO3 バージョン7を導入したことにより不整脈を発生させる回路や起源の自動解析機能がこれまで以上に向上しています。カテーテルアブレーション治療のさらなる効果が威力の発揮が期待されます。
治療実績
不整脈の根治療法であるカテーテルアブレーション治療の治療実績が2017年4月24日に1000例を超えました。2013年10月に不整脈センターを開設し、より安全な治療の実施に寄与する最新の3Dマッピングシステムを導入するなどし、大城力・循環器内科部長兼不整脈センター長が中心となり、野村悠医師、看護師や臨床工学技士、診療放射線技師など関係する多くのスタッフの協力のもとで1000例の大台を達成できました。
石垣島や沖永良部島など遠方からの受診も増加し、心原性脳梗塞の発症を未然に防ぎ、患者様の健康と生命を守るため、今後も積極的に同治療に取り組んでまいります。
医師紹介
大城 力 | 循環器内科統括部長・不整脈センター長 | |
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学会 | 日本循環器学会、日本不整脈学会、日本不整脈心電図学会評議員(第2期) |
野村 悠 | 循環器内科医長 | |
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学会 | 日本不整脈学会、日本循環器学会、日本再生医療学会、日本内科学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本病院総合診療医学会 | |
指導・専門・認定 | 日本不整脈心電学会認定不整脈専門医、日本内科学会認定内科医、日本循環器学会専門医、植込み型除細動器(ICD)/ペーシングによる心不全治療(CRT)研修修了 |
循環器疾患で最も多いのが不整脈です。不整脈は症状の弱いものから生命を危険にさらす不整脈まで様々です。
当院では、2014年5月から県内最新のアブレーションシステム(不整脈根治治療)を導入し、治療が可能となります。