腹膜透析
腹膜透析とは血液透析、腎移植と並ぶ慢性腎不全における腎代替療法のひとつ、胃など腹部の臓器を覆う半透明膜「腹膜」の機能を生かして腎臓の代わりに血液を「ろ過」する方法です。
腹膜透析 治療の流れ
最初に手術であらかじめカテーテルを腹部に埋め込みます。通常は開腹手術で行われますが、我々の施設では内視鏡で腹腔を見ながらカテーテルを適切な場所に留置し、固定する腹腔鏡手術で行っています。カテーテルを適切な場所に固定することで、より効率的、効果的な透析を実施できます。カテーテルを埋め込む手術は30分~1時間と短時間で、身体的負担も減らすことができます。
カテーテルを埋め込み手術の約1週間後から腹膜透析が可能になります。腹部内に透析液を注入すると腹膜の表面には網の目のように血管が走っており、腹部内に透析液が貯留すると、濃度勾配によって血液中の老廃物や余分な水分、尿毒素などが透析液へ移っていきます。
一定時間が経過した後、再びカテーテルに排液用の透析液バッグを取り付け、体内から透析液を排出することで血液を浄化するという仕組みになっています。透析バッグの交換はケースバイケースですが通常30分以内で1日に4回実施します。
自宅や職場での透析が可能
メリットは患者様の負担が少ないことです。例えば医療機関で一般的に行う血液透析に比べ、腹膜透析は大きな機器が必要なく、患者様自身で透析液バッグを交換するだけで良いため、自宅や職場での透析が可能となります。血液透析であれば一般的に1回4時間、週3回の通院が必要ですが、腹膜透析は月に1、2回の通院に抑えられ、仕事をはじめ日常生活での自由な時間を多く確保できます。また食事や水分摂取がある程度、自由にできるのも特徴です。
これまでは、腹膜透析は若い腎不全患者様に行われることが多かったのですが、最近では、高齢の腎不全患者様の腹膜透析が増えています。その理由としては、血液透析は1分間に200ccを脱血して戻したりするため、高齢の透析患者さんは透析中の血圧変動が激しく体への負担が大きい事、シャント作製が困難な高齢透析患者さんが増えている事、そして高齢者は血液透析のために週三回の透析施設への通院が困難であるためです。以上の事から、高齢の透析患者様が、血液透析よりは腹膜透析が望ましいと考えられようになってきております。加えて経済的負担も一般の血液透析とほとんど変わりません。
※治療の対象は年齢、性別ともに問わないのですが、腹部の手術歴があり腸管の癒着などが見られた場合、カテーテルの留置が難しいことがあり、腹膜透析を実施できない可能性もあります。
透析患者様のニーズにより広く応える
今後は本格的に展開していくと同時に、患者数増に伴い透析室専属の看護師育成など体制強化も視野に入れながら、積極的に行っていきます。高齢の透析患者様も多く、通院が困難になっても在宅や介護施設で透析ができるように、治療の選択肢を増やすことで、透析患者様のニーズにより広く応える環境整備に努めていきます。
当院院長 兼 血液浄化センター長
大城吉則