ダ・ヴィンチ(da Vinci)

ダ・ヴィンチ(da Vinci)

前立腺がん治療

ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術を受けられる方へ

ダヴィンチによるロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術の特徴は、手術の際の内視鏡画面が3Dの立体空間で表現され、さらに30倍の視野拡大も可能で良好な視野で手術を行います。ダヴィンチに装着された鉗子は従来の腹腔鏡鉗子よりも動きの自由度が高く、さらにコンピュータ制御による手振れ補正がされるため、細密で正確な手術が可能となります。

  • ダ・ヴィンチ
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  • ダ・ヴィンチ

米国では2000年にロボットによる前立腺全摘が開始され、手術が安全性・確実性の面で従来の開腹手術や腹腔鏡下手術より優れていることが証明され、現在では前立腺摘出術の90%以上がダヴィンチによるロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術で行われています。

日本では2012年4月に、ダヴィンチによるロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術は健康保険の認可を承認され、それ以降低侵襲手術として急速に普及してきました。当院も2012年にダヴィンチを導入し、これまで250例以上のロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術(2017年8月現在)を行ってきました。

前立腺癌に対する開腹手術とダヴィンチの比較

【開腹手術】
下腹部に内視鏡および手術器具挿入する
開腹手術図解
お臍から恥骨まで正中皮膚切開
【ダヴィンチ手術】
下腹部に内視鏡および手術器具挿入する
ダヴィンチ手術図解
穴が6ケ所

ダヴィンチによるロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術の利点

  • 腹部の傷が小さいため、痛みも少ない ⇒ 社会復帰が早い
  • 出血が極めて少ない ⇒ 輸血が必要となる出血はほとんどない
  • 手術後の尿失禁の回復が早い
  • 手術後の性機能障害の回復が早い
  • 前立腺癌の治療成績(再発率)も開腹手術よりもよい

入院から手術~退院まで

当院での手術の概要(入院、手術、退院まで)について説明します。

入院
  • 月曜日手術の方は手術2日前、火曜日の方は手術前日に入院し、手術に備えます。
  • 手術前日夕食後(18:00)以降は食事禁止、21:00以降は飲水禁止です。
  • 眠前に下剤を内服し、手術当日の朝に浣腸を行います。
手術
  1. 麻酔
    全身麻酔で行います。手術前日または当日の朝に麻酔科医師が全身麻酔の説明と診察を行います。
  2. 手術の姿勢
    前立腺は骨盤の奥深くに位置しておりますので、腸管が手術視野のさまたげになるのを防ぐために、約30度頭側を低くして行います。その際、眼の圧力が高まる可能性があるため緑内障の方は注意が必要ですので、前もって眼科医の診察を受けて頂いております。
  3. 手術
    手術は前立腺と付随する精囊を一緒に摘出し、前立腺を摘出した後に膀胱と尿道をつなげます。また、リンパ節への転移を確認するため前立腺の近くにあるリンパ節も摘出します。
    1. 腹部にポートを設置(径5-12mm、6ヶ所)
    2. 設置したポートに手術ロボット・ダビンチを装着し、ロボット専用の特殊なカメラと鉗子をお腹の中に挿入して手術を開始します。
      手術をする医師はベッドから少し離れたところで、これらの内視鏡や鉗子を操作し手術を操作します。
    3. 前立腺を剥離し、膀胱との間を離断、尿道を切断して前立腺を精嚢と一緒に取り出します。
    4. 次に、膀胱尿道吻合、吻合した箇所から尿が漏れないことを確認します。
    5. 前立腺周囲のリンパ節も摘出します。
    6. たまったもの(浸出液)の排除のためにドレーンという管を留置します。
    7. 内視鏡を入れたお臍の上の傷から前立腺を取り出して、手術を終了します。
      手術時間は概ね約3時間を予定しています。

なお機器(ロボット)の不具合がまれに起こることがあります。その場合は従来の腹腔 鏡下手術や開放手術に移行して手術を続けることがあります。

一般的な術後経過(退院まで)

<術後~翌日>

  • 点滴の管、尿の管(尿道カテーテル),おなかの管(ドレーン)が体に入っています。
  • 翌日にはベッドに座るところからはじめ、歩行もできます。
  • 腸の動きがよければ、翌日から水分や食事を摂ることができます。

<3日目以降>

  • 術後数日は感染がなくても発熱がみられることがあります。
  • ドレーン、点滴の管は手術後2-3日で抜去します。(状態に応じて長くなることもあります。)

<4目以降>

  • 手術後4日目に尿道カテーテルを抜去します。
  • 皮下を吸収糸で縫合しますので、抜糸は不要です。

<6日目以降>

  • 手術後6日目以降、排尿状態に問題がなければ退院できます。

※上記はあくまで順調な経過の場合です。経過には個人差があります。また腸管などに損傷が起こった場合などは食事の開始は遅れます。また、術後の失禁や排尿状態の回復にも個人差がありますのでご了承ください。

ロボット手術の副作用と合併症

ロボット手術はとても良い手術であることをわれわれ術者は実感していますが、決して小さい手術ではなく、以下に述べる副作用を十分理解して頂くことが大切です。

【一般的な手術の合併症】
  • 出血
    前立腺の周囲は豊富な静脈でおおわれているため、従来の開腹手術では出血量の多く(1000 ml~2000 ml)なっていましたが、ロボット手術では出血は極めて少なく(50 ml~200 ml)、術中の輸血を行うこともほとんどなくなりました。当院では250例以上の手術を行いましたが、輸血を行ったのはわずか1例のみです。
  • 直腸損傷
    前立腺の裏側には便が通る直腸があります。前立腺を摘出するためには直腸から剥がしてとらなければなりません。
    その際に直腸を傷つけてしまうこと直腸損傷といいますが、手術中に直腸損傷が確認できれば、損傷部位を縫合して修復します。
    一方、手術時の対応が難しい時には、大腸を左腹部に通して人工肛門を作り、6ヶ月〜1年間は人工肛門から便をします。直腸損傷が自然治癒した後に、改めて6ヶ月〜1年後に人工肛門をもとに戻す手術をします。
    幸い、当院では人工肛門を必要とする直腸損傷は起きていません。
  • 創部感染
    ロボット手術は内視鏡手術のであるため、傷はとても小さく感染して傷口が開くことは極めて稀です。
  • 血栓症
    手術中は長時間同じ姿勢でいるため、足の血液の流れで滞り血が固まり少なります。それが心臓、肺、脳に行き梗塞を生じます(飛行機のエコノミー症候群と同じ)。稀な合併症ですが、発生すると重症になることがありますので、足の血液の流れを補助するため、空気圧でマッサージする装置を足に巻き、術中から手術の翌日まで足の空気圧マッサージを行い、血栓の予防対策を行います。
【前立腺全摘出手術に特徴的な合併症】
  • 尿失禁
    立腺全摘出手術で、患者さんが最も困るのが尿失禁です。排尿のコントロールは前立腺のすぐ下にある外尿道括約筋が行いますが、前立腺を摘出する際にこの外尿道括約筋のはたらきが一時的に弱くなるために尿失禁がおきます。手術後4日目に尿道に入っている管を抜きますが、抜いた当日、翌日は失禁が多く、失禁用のパッドが必要です。尿失禁は徐々に改善し、個人差はかなりありますが、手術後1ヶ月後には失禁用のパッドを1−3枚で済むようになり、手術後3ヶ月後にかなり改善します。改善が遅い時にはお薬を使用することもあります。また、尿禁を改善するための骨盤底筋体操を指導します。
  • 性機能障害(勃起不全)
    前立腺の左右外側に勃起神経が走っています。術前の組織検査やMRIでがんが認められた箇所の神経は温存せず、前立腺と一緒に切り取ることが多くなります。それは神経温存をすることでがんが身体の中に取り残されてしまう可能性があるからです。がんのない側の神経の温存が可能ですので、相談の上神経温存行うかを決めます。前立腺の左右ともにがんを認めた方は、ご希望に応じて針の中のがんの悪性度を参考にしてご希望であれば温存するようにします。通常、両方の神経を温存すると手術後2年後までに80%の方が性機能の改善をみますが、片方の温存ですと約40−50%となります。性機能障害サポートする薬がありますので必要であればお薬を使用します。

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